
コロウラット家紋章文蓋付ゴブレット 1720年頃 ボヘミア
無色ガラス、カット、エングレーヴィング
プラハ国立美術工芸博物館所蔵
今回の展覧会は8月30日(日曜日)まで。チェコのプラハ国立美術工芸博物館所蔵の
ボヘミアン・グラスの名品170件を紹介している。
ボヘミアン・グラスは何といってもカットとエングレービングの美しさ。
7月4日(土曜日)記念講演会「ボヘミアン・グラス:造形と変遷」が行われ、早速取材に。
人気の要因をわかり易く教えて下さった。
講師は土田ルリ子氏(サントリー美術館 学芸部 学芸副部長)。
氏は本展覧会の企画者の一人。
「ボヘミアン~といえばこの曲をご存知の方は年がわかります(笑)。
よく流浪の人と勘違いされますが、チョコ共和国の西郡から中部の地名を指してます。」
通常、ガラスはケイ素とソーダ灰、石灰石(すべて石や砂の中からとりだしたもの)。
それらを合わせて1500度以上の高温で溶かして作られる。
ボヘミア産の木灰からとれる良質なカリ(炭酸カリウム)は精度が高く、
ソーダ灰よりさらに透明度を増す働きがあり、屈折率をより高める。
だからボヘミアン・グラスは水晶のような耀きとなる。
まずは15世紀の作品を紹介。この時代の作品が残っているのは稀。

ビーカー(ヌッペンベッヒャー)
15世紀前半 ボヘミア
緑色を帯びた無色ガラス、ホットワーク
プラハ国立美術工芸博物館所蔵
17世紀に入り、ルドルフ2世皇帝統治下でカット技術が確立される。
(一番最初の画像のゴブレットはその代表的作品)
お見せできないのが残念だが、男性の筋肉隆々部分の素晴らしく表現したカッティング。
その厚さは2・3ミリほど!
二層グラスの間に金箔模様を入れ込んだゴブレット。
二層グラスを接着するために間に流し込んだ樹液には所々に気泡が。
「これが17世紀の空気なのかと思うと感動しますよね。」
様々な色ガラスの開発より一気にモノクロからカラーの世界へ。
アール・ヌーヴォー、アール・デコの時代へ。

花鳥文蓋付鉢 1850年頃
おそらくハラフ・ガラス工場
クルコノシェ山脈ノヴィー・スヴェット
無色ガラス、エナメル被せ、ロザリンガラス内被せ
カット、金彩、エナメル彩
プラハ国立美術工芸博物館所蔵

古ドイツ様式文栓付デカンタ
1881年 ハラフ・ガラス工場
クルコノシェ山脈ノヴィー・スヴェット
緑色ガラス(ゲマイングリュン)
ホットワーク、エナメル彩
プラハ国立美術工芸博物館所蔵

酒器セット 1900年以降
マイヤーズ・ネッフェ・ガラス工場
シュマヴァ・アドルフォフ(製作)
無色ガラス、宙吹き
ホットワーク、エナメル彩、金彩
プラハ国立美術工芸博物館所蔵
そして巨匠たちの手により、時代に添った作品が次々に生み出されている。

レスラー 1925年頃
ヤロスラフ・ブリフタ(デザイン)
ガラス工芸専門学校、ジェレズニー・ブロド
「アイゼンブロート」(製作)
ランプワーク、針金、ラッカー塗装木材
プラハ国立美術工芸博物館所蔵

卵 1987年
イヴァン・マレシュ
ガラス、鋳造溶融
エッチング、カット
プラハ国立美術工芸博物館所蔵
最近、土田氏がチェコのガラス工房を訪ねたとき驚いたことは、
職人さんたちが満足できないものは無造作に投げられ粉々になっていたこと。
「どこがだめなの?思わずキャッチしたくなりました」と土田氏。
チェコ人の職人魂がわかる。
ボヘミアン・グラスの‘静‘はその変わらぬ耀き、
時代を越えてどの角度から見ても飽きない美しさを保っている。
そして‘動‘は時代にあった姿形をグラス、ステンドグラスに限らず、
アート作品のオブジェなど柔軟に対応していったこと。
これが7世紀もの間世界中から愛される要因。
講演会には100人ほど参加。
最後のスライドでボヘミアン・グラスにビール(プレミアムモル◯)を注いでる画面で
爆笑のうちに終わった。
皆一同ますますボヘミアン・グラスのとりこに!
時代を越えてますます水晶のように耀く姿をぜひご覧あれ!
Photo © Gabriel Urbánek

- 神戸市立博物館
- <コウベシリツハクブツカン>
- 神戸市中央区京町24番地
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開館時間 | 午前10:00~午後5:00(土曜日は午後7時まで 入館は閉館30分前まで) |
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定休日 | 原則として月曜日(国民の休日・振替休日のときは翌日) 年末年始 その他の臨時休館日 |
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駐車場 | 無 |
入館料(常設展・企画展も合わせてご覧いただけます)
当日券 団体券(20名以上)
一 般 1,300円 1,100円
高校・大学生 900円 800円
小・中学生 500円 400円