
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《昼食後》
1879年 油彩・カンヴァス、100.5×81.3cm
シュテーデル美術館、フランクフルト
Photo:©Städel Museum‐U.Edelmann‐ARTOTHEK
※日本初公開。
ルノワールはご存知、印象派の中でも人物画で有名な巨匠。
光の変化によって変わる一瞬の女性の肌、髪の美しさ、その瞳、
これほどまでに柔らかく美しく描く画家はもう現れないのかもしれない。
彼の出身は意外と労働者階級。父レオナール・ルノワールは仕立て屋で
愛情ある母マルグリットのもとで、貧しいながらも温かな家族で
7人兄弟6番目の子として育っていった。
生活手段のため陶器の絵付け師となり、しばらくして画商の家族を描くようになる。
やがて女性の美、純粋無垢な子供の愛らしさを追求するようになる。

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《白いエプロンのリュシー・ベラールの肖像》 1884年 油彩・カンヴァス、35.2×27.1cm ペレス・シモン・コレクション、メキシコ © Arturo Piera
上記の作品は、少女のあどけなさと大人になるあやういとき、
その美しさを丹念に描いている。
光による髪のはね具合など、この子供のふくよかな肌の色はルノワールしか出せないもの。
下記の作品は少女たちのこの時期にしかない、若々しさを背景と被写体を交え柔らかなタッチで描いていく。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《草原で花を摘む少女たち》 1890年頃 油彩・カンヴァス、65.1×81.0cm ボストン美術館 Juliana Cheney Edwards Collection, 39.675 Photograph © Museum of Fine Arts, Boston
1879年頃日本の芸術を模倣したジャポニズムが流行り、下記のような作品も描く。
当時人気コメディ女優、ジャンヌ・サマリーがモデル。団扇の女性の姿を真似した
ポーズで少しおどけて、恥ずかしさもあり唇元が何とも可愛い。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《うちわを持つ女》 1879年頃 油彩・カンヴァス、65.5×54.0cm クラーク美術館 1955.595. Photo © Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA. Bridgeman Images
他にも妻アリーヌや家政婦ガブリエルや子供たちなど、身近な人を描いていく。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ストライプのスカートの座る少女、ガブリエル》 1895-1896年 油彩・カンヴァス、44.5 ×37.0cm ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館、コペンハーゲン Photo: Ole Haupt
ガブリエルは家政婦で、ルノワールの妻アリーヌの遠縁の人。ルノワールの次男を出産後
家事と子守を兼ねて雇われた。ルノワールの晩年には作品の助手をつとめ、リューマチ性疾患に悩まされた彼を献身的に仕える。彼女は作品のモデルに多々出てくる。
女性の偽りのない美しさを描いていく。
個人的には下記の作品が展示会の中でもとりわけ異彩を放ち注目されていた気がする。
表面的な美しさではなく、内面から放つ無条件の女性の優しさを追い求めていたのかもしれない。

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《おもちゃで遊ぶ子ども、ガブリエルと画家の息子ジャン》
1895-1896年 油彩・カンヴァス、
54.3 ×65.4cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー
Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon 1985.64.36 Courtesy National Gallery of Art, Washington
やがて母性を追及するようになる。
女性は光と創造性の源として、理想の曲線求めて描くようになる。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《風景の中の座る浴女 またはエウリディケ》 1895-1900年 油彩・カンヴァス、116.0×89.0cm ピカソ美術館 © RMN-Grand Palais (musée Picasso de Paris) / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF
妻アリーヌの死後母子像を多く制作する。

ピエール=オーギュスト・ルノワールとリシャール・ギノとの共作 《母と子》 1916年推定 ブロンズ、54.6×24.8×33.0cm ペレス・シモン・コレクション © Rafael Doniz
常々彼は「画家は美しさのあらゆるものに見出さなければならない、
観る人を詩人にさせなければならない」と言っていた。
79歳でその生涯を閉じるが、亡くなる朝、アネモネの水彩画を描き
「絵はなんたるものかわかってきた気がする」と家族に話したそうだ。
彼の作品を通して、今までと違う日常の何気ない物、身近な人、光の温かさを必ずお気づきになることだろう。

- 京都市美術館
- <キョウトシビジュツカン>
- 京都市左京区岡崎円勝寺町124(岡崎公園内)
- TEL:075-771-4107
開館時間 | AM 9:00〜PM 5:00 (ただし入場はPM 4:30まで) |
---|---|
定休日 | 月曜日(祝日の場合は開館)及び年末年始(12月28日〜1月2日) |
アクセス | ※JR・近鉄をご利用の方 JR「京都」駅北側の市バスターミナル、A1乗り場から5系統岩倉行きにて約30分、又はD1乗り場から100系統銀閣寺行き(急行)にて約25分、「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ 地下鉄烏丸線「京都」駅より「烏丸御池」駅乗り換え、地下鉄東西線「東山」駅下車徒歩10分 JRにて滋賀県方面から在来線でいらっしゃる場合は、JR「山科」駅にて地下鉄東西線に乗り換え、「東山」駅下車が便利です。 ※阪急電車をご利用の方 阪急「河原町」駅下車、「四条河原町」バス停から 市バス5系統岩倉行き、又は32系統銀閣寺行き、又は46系統平安神宮行きにて、いずれも約10分、「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ 阪急「河原町」駅中央改札を出て、6番出口から地上に上がっていただければ、左手すぐが46系統の止まるバス停です。 ※京阪電車をご利用の方 京阪「三条」駅下車、「三条京阪前」バス停から 市バス5系統岩倉行きにて約5分、又は京阪「祇園四条」駅下車、「四条京阪前」バス停から 市バス46系統平安神宮行きにて約10分、「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ |
駐車場 | 無 |
()は団体20名以上の団体料金