【北摂パブリック紀行 Vol.5】 本を通じた人のつながり


素敵なまちには、みんなが集まって楽しめる素敵な場所がある。北摂の“市民や企業が育てたパブリックな場”を訪ねるまちづくりシリーズ。第5回は、本を通じて人と人がつながる「ビブリオバトル」と「まちライブラリー」です。

(シティライフ2016年3月号の掲載記事のノーカット版)

■コラボ談話室 ブック&トーク

千里中央にあるコラボ(豊中市千里文化センター)。ここでは、市民がつくるコラボ市民実行委員会の企画運営によって、「コラボ大学校」「哲学カフェ」「多文化カフェ」など多彩な事業が行われています。そのなかの「コラボ談話室」(第一土曜日の10~12時)は、いろいろな世代の人が集まって、お茶を飲みながら談話しましょうと、もう6年近く開催されている集まりです。

1月のテーマは、「ブック&トーク 本を持ち寄って話そう!」でした。常連メンバーでもある山添好美さんが長年持ち続けてきた「本を通じた集まりをしたい」の実現をサポートしようと、プレイベントとして開催したものです。山添さんの趣旨説明のあと、この日の参加者の中の8人が順に“おすすめ本”を5分で紹介します。時間がオーバーしないように、進行役の濱崎定也さんはストップウォッチ使いましたが、意外に要領のいいプレゼンが続きました。プレゼンのあと、感想や質問の時間を2~3分とりました。この日紹介された本は、『建築家 安藤忠雄』(安藤忠雄)、『認知症になった私が伝えたいこと』(佐藤雅彦)、『たった一人の老い支度 実践編』(岡田信子)、『追いかけるな大人の流儀』(伊集院静)、『スキップ』(北村薫)、『勇気づけの家族コミュニケーション』(野田俊作)、『イスラム文化』(井筒俊彦)、『しんがりの思想』(鷲田清一)といろいろです。

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コラボで開かれた「ブック&トーク」

 

そのあと、プレゼンを聞いて読みたくなった本を投票して第1位の「チャンプ本」を決めました。チャンプ本は、9票を獲得した『スキップ』と『しんがりの思想』でした。終わってから、「こんな集まりはじめて、楽しかったー」「○○の本を読みたいと思った」「読んだ人を知っているから、余計にその本のことがわかる」などの感想が参加者から聞かれました。

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プレゼンされる本を白板に書いて進める

 

本を紹介し合ったあと、みんなで感想などを出し合い、最後に投票でチャンプ本を決めるこの集まりは、ビブリオバトル(※)と呼ばれ、数年前から“人を通じて本を知り、本を通じて人を知る”のコピーとともに全国に広がっています。コラボ談話室での「ブック&トーク」が好評だったことから、「ビブリオバトル in コラボ」として、4月以降にコラボで定期的に開催される予定です。

※「ビブリオバトル in コラボ」 第1回は4月23日(土)10:30~12:30、コラボ2階の多目的スペースにて開催。発表者6名、観覧者20名の受付は4月4日(月)10時開始。第2回は6月18日(土)14時~16時の予定。

※ビブリオバトル:ビブリオは書物などを意味するラテン語に由来する言葉、バトルは戦いの意味。テーマを決めて本を持ち寄ることが多く、毎回チャンプ本を決めるとのこと。

 

■まちライブラリー

≪まちライブラリー@大阪府立大学≫

南海なんば駅の南にある南海なんば第1ビル。この中にある大阪府立大学の「I-siteなんば」(※)に「まちライブラリー@大阪府立大学」があります。中に入ると、開放的なスペースの両側の本棚に本がずらりと並び、まん中にテーブルが置かれています。会員になれば、本を借りたり、読んだり、イベントを開催したり、参加できます。ホームページに「人との出会いや、学び合いの場として『人と人』『まちと人』『大阪と各地域』をつなぐ場となることを目指しています。」とあるように、普通の図書館とは違います。本棚に並ぶ本は、「0冊からスタートする、みんなで育てるライブラリー」とあるように、すべてみんなで持ち寄ったものだそうです。

※I-siteなんば:大阪府立大学が創基130年を記念して、さまざまな知的活動を展開する「場(サイト)」として2013年4月に設置した施設。西日本初の観光系社会人大学院や観光産業戦略研究所、まちライブラリー、セミナールームなどからなる。

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まちライブラリー@大阪府立大学

 

まちライブラリー@大阪府立大学は、どんなところなんだろう?と、1月下旬に開かれた「街並み」がテーマのイベントに参加しました。約20名のこぢんまりした、和気あいあいとした雰囲気の集まりでした。イベントの案内に「都市や街並みに関する本をもってご参加ください」とあったので、私も一冊もって行って寄贈しました。カードにメッセージを書いて寄贈することがルールになっているので、この本がどんな本なのか、どこがオススメなのかを書いて係の人に渡しました。きっと今頃、大きな本棚のどこかにその本がメッセージとともに置かれているでしょう。もしかしたら、その本をだれかが借りて、メッセージを読んで下さったかも知れません。

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寄贈された本がメッセージとともに並ぶ本棚

 

まちライブラリーは、“「本」を通して「人」と出会うまちの図書館”と呼ばれるように、本を持ち寄るときに、なぜその本を持ってきたかをカードに書き、本に入れて共通の本棚に置く。本を借りて読んだ人が感想などをカードに書きたし、共通の本棚に返す。この繰り返しによって、人と人がつながっていくこと(メッセージのついた本を通じたコミュニティづくり)をねらいとしているのです。「まちライブラリー」は、磯井純充(いそいよしみつ)氏が提唱し、お店、寺、オフィス、病院など、全国約70箇所に広がっています。

DSCN1750寄贈者の想いが書かれたメッセージカード

 

≪まちライブラリー@もりのみやキューズモールBASE≫

「まちライブラリー@大阪府立大学」に先立つ10月下旬、「まちライブラリー@もりのみやキューズモールBASE」を訪ねました。「もりのみやキューズモールBASE」は、約20年間利用されていなかった元日生球場の敷地をT不動産が再開発してできたショッピングモール。「スポーツや健康に特化したコミュニティ型ショッピングセンター」として従来の商業施設と一線を画し、物販の面積は約4割にとどめているようです。

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もりのみやキューズモールBASE

 

2階にある「まちライブラリー@もりのみやキューズモールBASE」は、図書棚、フリースペース、カフェ、FM COCOLOのサテライトブースなどで構成されています。会員登録者数は1100人(大半が近隣住民、登録料500円)。ライブラリーが会員などの寄贈によって育てられること、会員は本を借りたり、5~10人程度の小さなイベント会場としても利用できることは、まちライブラリー@大阪府立大学と同じです。カフェだけの利用も可能です。この日は、FM COCOLOのライブ中継中でした。そのライブの音が流れるなか、カフェのランチや飲み物をいただきながら本を読む人、パソコンに向かう人、談笑する人たちなどさまざまです。こんな場所が近くにあれば、私も本や人に出会うためにときどき行くのだが・・・と思える素敵な空間でした。
※奥村武資さん(まちライブラリースタッフ、おおさか歩き案内人)に案内いただきました。

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まちライブラリー@もりのみやキューズモールBASE

 

ビブリオバトル、まちライブラリー・・・。形は違いますが、これまでなかった「本を通じた人のつながり」の輪が広がっているようです。

※まちライブラリーは、立命館大学大阪いばらきキャンパス(茨木市)にもあります。

 

≪お願い≫

北摂のパブリックな場を訪ねて取材します。あなたの近くにある「市民や企業が中心になって育てた、みんなが集まれる心地よい場所」がありましたら、ご紹介ください(「コメント」にご記入ください)。

 


この記事を書いた人:

山本 茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった”みんなが集まれる素敵な場所“を発掘し、人とともに紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
http://news.archive.citylife-new.com/news/35724.html