
「日番が共通語じゃない驚き」「大判焼き?回転焼き?あれは御座候」「春はいかなご」「淡路には必ず名前を口ずさんでしまうホテルがある」こんな兵庫県の“ふるさとあるある”が飛び交う場所がある。昨年誕生150周年を迎えた兵庫県が立ち上げた、「U5H兵庫五国連邦プロジェクト」特設サイト内のエピソード投稿だ。
【ふるさとの良さを再認識】
兵庫五国とは、明治以前の但馬、丹波、播磨、淡路、摂津(神戸・阪神)の旧五国のこと。同一県内での地域性の違いが、全国でも特に際立つ兵庫県の特徴を連邦国になぞらえ、「U5H」(ユナイテッド・ゴコク・オブ・ヒョーゴ)として兵庫県を再定義した。五国には、それぞれのキャラクターも存在。“あるあるネタ”とともにキャラが登場するポスターを県内の駅や施設など約500カ所に掲示し、PRを行っている。ふるさとを思い出し、郷土の魅力を再発見してもらおうと、2月に県の広報戦略課がプロジェクトを立ち上げた。企画の意図について、広報官の湯川カナさんは、「地域を作るのはふるさとに対する想いです。そして、ふるさとはそれぞれの具体的なエピソードによってできるもの。ふるさとを思い出すことでその良さを再発見し、“子どもに伝え残したい”など、主体的な動きが生まれるといいなと思います」と話す。
【県民性が5つに分かれる唯一の都道府県】
東西南北より海側山側。よそ行くと迷子になる……(神戸・阪神)」「いつの間にかオシャレな田舎。そら京の都のお隣やさかいなあ(丹波)」などと、五国民なら思わず“あるある”と頷いてしまうキャッチフレーズとともに登場するキャラクター。イラストを描いたのは、全国47都道府県の県民性を題材とした漫画「うちのトコでは」(飛鳥新社)の著者もぐらさん。同漫画では、1都道府県につき1キャラクターが原則。にもかかわらず唯一の例外が兵庫県で、5キャラクターが設定されている。明治時代、北海道を除くと他に例をみない5つもの国が集まって設立された兵庫県。令制国としての歴史の長さや地理を考えると、県民性の違いからどうしてもキャラクターが複数必要だったという。湯川さんは、「県内でも他の五国を知らないという人は多い。ポスターをきっかけにふるさとの会話が生まれ、他地域を認め合う交流のきっかけになれば」と期待する。
【県内外へ次々と展開 ふるさと愛を広げる】
プロジェクトの手応えはどうか。「人口比から、反応は神戸・阪神が多いとは思っていましたが、播磨の勢いがすごい(笑)。丹波は、発言自体は控えめですが、SNSでのシェアには積極的になるなど、ここでも地域性を感じます」と県職員の能登さん。また、プロジェクトを知った店舗や施設などからは、ポスター掲示の問い合わせも来ているという。
さらにプロジェクトは兵庫県外へも。同じ地名を持つ地域にスポットを当て、親近感を抱いてもらう企画「君ノ名ハ、」が進行中だ。すでに大阪の「淡路」や、京都の「丹波橋」に兵庫五国のポスターを掲示。今後も各地に取り組みを広げる予定だ。また、3月からは地域の古い映像や写真を集めた「ヒョーゴアーカイブス」も開始。昭和30年代から主に映画の幕あいなどで放映されていた、県庁作成の「兵庫県ニュース」など、貴重なコンテンツをインターネットで公開している。
兵庫県の広報が、こうした「県民主役」のプロモーションを行うのは今回が初めてだという。湯川さんは、「地域のみんなが盛りあがる、ここに生まれてよかったと誇りを持てるような企画を続けていきたい。観光客誘致など対外的なPRとしては今のところ考えていませんが、県民が楽しそうにしている様子を外からみて、自然に観光や移住を考えるようになってくれたら嬉しい」と期待を話した。
U5H兵庫五国連邦プロジェクトHP https://u5h.jp/