
神戸市消防局は、自身の状況に合うタクシー会社や介護タクシー事業所に24時間自動音声で電話をつなぐコールセンター、『おくる電』を2019年3月に開設した。同局によると、平成30年救急出動件数は88,605件(前年比5,424件(6.6%)増)で過去最多となり、インフルエンザの流行や猛暑も影響し救急出動が急増。神戸市内では33台の救急車が約6分に1回の割合で出動している。なかでも高齢者の要請数は、平成19年度は全体の約49%、平成29年度は約60%と65歳以上の利用数が上昇。今後も右肩上がりに出動件数が増加する予想だが、救急車や人員を増やすことは莫大な費用がかさむため厳しい現状だ。この状況を打開するため、昨年救急対策を検討する第3者委員会を設立。救急病院の協力のもと、救急車の実態調査を約1か月間を実施したところ、約70%は緊急性が無いということがわかった。
【実証調査から生まれた「おくる電」】
救急車の適切な使い方を模索する中、ベンチャー企業と行政課題を解決するため神戸市が取り組むUrban Innovation KOBEに参加。2017年度にはアプリ「さぽのる」を立ち上げ、7週間の実証調査を行った。調査の結果利用者は、アプリに登録する送迎事業者の電話番号の利用が目立った。この結果をふまえ電話で対応できる『おくる電』が生まれた。
対象者は、神戸市在住で病気などの疾患があっても緊急性のない症状の人。電話をかけるとロボットによる自動音声電話が応答。条件にあった送迎事業者を選択すると、事業者へ直接通話がつながり予約するシステムだ。登録事業者は、神戸市内の一般タクシー会社、患者等搬送認定事業者など約80社。福祉タクシーや車椅子、ストレッチャーによる乗車、階段での介助などを受けられる事業者もある。長谷さんは「送迎が必要な時にはおくる電を利用してほしい。ただ緊急時にはためらわず救急車を呼んでください」と話す。